変形性股関節症の改善に取り組む上で、気を付けなければならないポイントが3つあります。必ず覚えておいてください。

1:レントゲンだけでは診断できない

変形性股関節症の進行は4つの段階に区別されていると説明しましたが、実際はそのとおりに進行するとは限りません。

レントゲンでは末期と言える状態まで症状が進行しているように見えても、かなり自由に動けたり、それほど痛みを感じない患者さんもいらっしゃいます。

逆にレントゲンでは正常な股関節とほとんど変わらず、初期と診断されるような方でも強い痛みを感じる患者さんもいらっしゃいます。

なぜなら、股関節の痛みはレントゲンに写らない筋肉のコリや張り、硬直などによっても生じるからです。

レントゲンで判断する進行の度合いと痛みの度合いは必ずしも一致しないというのが、変形性股関節症の治療を難しくしている要因のひとつです。

股関節の診断は、専門家でも比較的難しい分野とされています。

手術を回避する取り組みを決める上では、レントゲンからわかる進行の度合いだけでは情報が不十分です。

痛みや違和感といった『主観的な情報』と、可動域や筋力などの『客観的な情報』も含めて、総合的に判断しなければならないのです。

2:専門書が少ない分野である

さらに、股関節の分野は腰やヒザと比較すると専門書が少なく、医師の対応もたいていは「速やかな手術」「安静にして経過観察」のどちらかで済まされてしまいます。

手術の必要性がない初期の段階であっても、手術を勧められることがあります。

実際、

「整形外科の先生は手術をみすえた話しかしないし、痛み止めの薬と湿布を処方するだけで何もしてくれない」

というストレスを感じて当院を訪れる方は少なくありません。

股関節の痛みから解放されて手術を回避するには、画像の診断だけではなく関節の外にある筋肉の状態や、日常生活の様々な場面での股関節の動き方、普段の姿勢などの生活習慣にも注目する必要があります。

ですから、幅広い視点を持って症状の理解に努めてくれる先生に診てもらうことが大切です

3:股関節が痛む理由はさまざま

股関節が痛いと言っても、その原因は変形性股関節症以外にもいろいろとあります。整形外科でレントゲンを撮らずに、整体や鍼灸などの治療院に通っている場合は注意が必要です。

関節が痛みの根源だと思っていたら、実は関節ではなく周りの筋肉が痛みの根源だった、ということはよくあります。

間違った取り組みに手を出さないように、股関節に痛みを引き起こす可能性のある症状をご紹介しておきます。

痛みの原因1:股関節周りの筋肉のコリ

肩こりや首こりで痛みを感じることがあるのと同じように、股関節周りの筋肉がこっている場合も痛みを感じることがあります。

股関節は全身を支える関節で、日常生活において私たちの想像以上に負荷がかかっています。

関節の周りにある筋肉にも相当の負担がかかっていて、激しい運動をしなくても普通に生活をしているだけで「筋肉の使い過ぎ」になりやすいです。

特に脚を内側にひねった状態(内股)で立つ、歩く、立ち上がるなどの日常動作を行う癖があると、股関節周りの筋肉を使い続けているのと同じ状態になり危険です。

また「長時間座る」「立つときや歩くときに前傾姿勢」という状態も股関節のお腹側の筋肉を圧迫させ続けることになり、やはり使い過ぎということになります。

変形性股関節症の初期の段階では、痛みの根源は関節ではなく筋肉にあることが多いです

痛みの原因2:股関節唇損傷(こかんせつしん そんしょう)

「股関節唇」というのは、骨盤のくぼみを縁取りするように取り巻く柔らかい軟骨組織です。リング状のゴムパッキンのようになって大腿骨頭を包み込んで安定させ、衝撃吸収の役割を担っています。

股関節唇は激しい運動や加齢などの影響で損傷することがあります。また、骨盤のくぼみが浅い臼蓋形成不全(きゅうがい けいせいふぜん)の方は股関節唇を損傷しやすいです。

股関節唇には痛みを感じる神経があるので、損傷すると脚を動かしたときに引っかかりを感じるだけでなく、痛むこともあります。

日常生活の次の動作で痛みや違和感がある場合は、股関節唇損傷の可能性があります。

・あぐらをかく

・脚を組む

・靴下を履く

・爪を切るなどの股関節を深く曲げる動作

・車の乗り降り

・椅子から立ち上がる

痛みの程度は鈍痛から激痛まで様々です。股関節唇の損傷がひどくなると、大腿骨頭が不安定になって関節軟骨が破壊される要因になり、そこから変形性股関節症を引き起こすことがあります。

痛みの原因3:関節の炎症

実は、関節軟骨には痛みを感じる神経がありませんそのため、何らかの原因で関節軟骨がすり減ったり損傷を受けたとしても、それ自体が痛みにつながることはありません。

しかし、関節軟骨が損傷することで、滑膜(かつまく=関節を包む関節包の内側にある薄い膜)が炎症を起こすことがあり、そのせいで痛みを感じることがあります。

このように『股関節が痛い』と言っても、痛みが生じる可能性のある所はひとつではありません。症状が進行すればするほど、痛みの根源も複数現れてきます

以上のような理由で変形性股関節症の改善は難しいと言われています。やみくもに治療に取り組んでもなかなかうまくいきそうにないですよね。

でも安心してください。

正しい知識を身につけて正しい順番で取り組めば、手術を回避できる可能性は決して低くありません。

とにかく一番大切なのは『自分の股関節の状態を正しく把握すること』です。まずはここに力を注いでください。

今の状態を把握したら、次は”3つの観点”から手術回避に向けて取り組んでいきます

変形性股関節症の治療について、本やテレビでは様々な方法が紹介されていますが、実は手術回避の取り組みには3種類あって、それぞれ目的が異なるため、必要に応じて使い分けなくてはなりません。

しかし、それを意識していない方が非常に多く、症状が思うように改善しなかったり、何をやったらよいのかわからなくなる原因となっています。

ではこの”3つの観点”とはどんなものなのか?手術を回避する上でとても大切なことですので、しっかりと頭に叩き込んでおきましょう。

→手術回避の取り組み“3つの観点”とは?